2017年10月23日月曜日

ブレードランナー2049を見てきました。

リドリー・スコットの名作ブレードランナーの続編、「ブレードランナー2049」をフランスで見てきました。この作品、自分が日本滞在中、すでにフランスで始まっており、フランス帰国後にすぐに見ようと思っていたのですが、時差ぼけで、ちょうど映画の上映時間に眠くなるという状態だったため、時差ぼけが治るまで待ってからの視聴となりました。

ブレードランナー2049は前作の30年後を描く作品です。レプリカント(人造人間)狩りを任務とするブレードランナーの捜査官Kは、任務終了後にある農場で、地中に埋まっているケースを発見し、ケースの中から女性の骨を見つけます。この骨を分析したところ、骨には帝王切開の跡があり、この女性は妊婦であったことが分かります。そして、この骨は人間ではなくレプリカントのものであることが判明します。本来、レプリカントに生殖機能はないため、この情報は世界の秩序を乱すのに十分危険なものでした。Kは上司の命令により、妊娠した女性レプリカントにまつわる情報の抹消および生まれた子供の処分を命じられます。レプリカントが子供を産めるという事実を隠ぺいするため、Kはレプリカントが生んだ子供を探すことになります。一方で、Kが調査の過程で訪れたウォレス社も、生殖機能をもつレプリカントの秘密を知るため、同じく子供の行方を探るためにKを尾行、その過程で障害となる者を排除していきます。さらに、レプリカントによるレジスタンス集団も、事件の裏で暗躍し、事件が複雑化していきます。捜査の中、Kは自身の過去にまつわる真実を知ります。そして、Kはかつてのブレードランナー、捜査官デッカード(ハリソン・フォード)と出会い、女性レプリカントの正体を知ることになります。

基本的に、ストーリーは、Kがレプリカントから生まれた子供を探すという点が主軸に置かれて展開されます。内容的には、前作のエピローグという感じです。駆け落ちし、追われる身となったデッカードとレイチェルがその後どうなったのかが描かれます。デッカードに加え、少しだけですが、前作にも登場した捜査官ガフ(エドワード・ジェームズ・オルモス)も年老いた姿で登場します。今作でもちゃんと折り紙を織っています。

以下、いくつかこの作品の見どころを紹介します。


ディストピアな世界観
今作でも、雨の中のうす暗い街や街中に漢字や日本語、ハングル文字で書かれたネオンや3Dホログララフが多数存在する、退廃的で独特な未来の世界観は、前作からしっかりと継承されています。この退廃した世界観をより臨場感を持ってみたい人は、ぜひIMAX3Dもしくは3Dで見るのをお勧めします。残念ながら、グルノーブルにはIMAXはなく、自分がフランスに帰国した段階で、3Dも英語版の上映が終了していたので、自分は見れませんでした。チャンスがある人は、ぜひ、3Dで見るとよいでしょう。見たかった...!

今回、街の雰囲気でより特徴的だったのは、前作では中国がメインで世界を支配しているのに対して、街中の文字やいろんな電子機器が日本語で書かれており、作中のいたるところに日本語が表示されています。街中の雰囲気も、どちらかというと、現在の秋葉原のようなデザインになっており、コスプレをしているキャラなども登場します。監督は、日本のアニメとマンガが好きなんでしょうね。
Kが捜査に使う端末も、音声や文字が日本語だったりして、そこだけは気楽に聞くことができました。映画を生の英語で見るのは、割と神経を使います。英語がところどころ理解できず、たまにフランス語字幕を頼りに理解したりします。もっと、ネイティブのアメリカ英語をマスターしたい...。

また、今作で登場する新型レプリカントの製造会社ウォレス社も、前作のタイレル社を意識したデザインになっています。ピラミッドのような不気味なデザインになっています。社内の、波のような、どこか精神的を不安にさせる照明が印象的でした(映画本編で確認ください)。

ちなみに、前作のように、さすがに「2つで十分ですよ」という謎の日本語を話す屋台のおっちゃんは出てきませんでした。

科学技術
前作よりも30年後の世界なので、いろいろ新しい科学技術も登場します。特に、印象的なのは、主人公KのAIヴァーチャル彼女のジョイ(アナ・デ・アルマス)です。始め、ジョイは家の中のホログラフ映写機の下でしか動くことができませんでしたが、Kが買ってきた携帯端末により外でも動けるようになります。これにより、ジョイはKが訪れるあらゆる場所に同行できるようになります。オタク的には、ほしいアイテム、かもしれませんね。ちなみに、アナ・デ・アルマスは結構、美少女です。監督、絶対オタクだ。

前作同様、空飛ぶ車スピナーも登場しますが、新型のスピナーには様々なセンサーなどを装備したドローンが搭載されています。ここは現代的な要素が取り入れられていますね。

また、映画の初めには、広大な太陽光発電パネルの畑が登場します。このシーンを見た瞬間に、かつてのブレードランナーよりも少し先の未来のブレードランナーの世界に引き込まれます。

心理テスト
レプリカントと人間は区別が付かないくらいそっくりなため、前作では、レプリカントか人間か見分けるために、ブレードランナーが対象者に対して、変な質問による心理テストで見分けるというシーンがありました。今回はその対象者は、ブレードランナー自身に向いています。作品中では、この心理テストは捜査官Kのブレードランナーとしての、言い換えれば、命令に忠実に従う感情のないレプリカントとしての適正診断に使われます。ヴァーチャル彼女のジョイとのふれあいや、過去の記憶との対峙を通して、Kの中には徐々に怒りや悲しみといった人間的な感情が芽生えていき、最終的にはこの適正テストに不合格になります。前作でもそうでしたが、レプリカントの人間性を描く上で重要な設定として、今回も活かされています。

ただ残念なことに、今回、質問の内容については、英語がうまく聞きとれず、よく分かりませんでした。ここは後で、日本語版で確認したいですね。

音楽
前作のBGMとそっくりな雰囲気の楽曲が使われていて良かったです。どっしりとした暗い感じの音楽は今回の作品にもマッチしています。チャンスがある人は、できれば、IMAXの音響で聞いてみてはどうでしょうか。自分には、かなえられなかったので...。

ハリソン・フォード
インディージョーンズ、スターウォーズと続き、現役で活動し続けているハリソン・フォードですが、今作でもデッカード役で登場します。Kがデッカードと出会うのは、遺跡と化したラスベガス。H・R ギーガーのようなデザインの巨大な女性像が砂漠の中にたたずむラサ宇部ガスのホテルでKはデッカードを見つけ、そこで情報を聞き出すため、デッカードと激しい格闘を繰り広げます。ハリソンフォード、まだ現役でバリバリのアクションをkますという、なんとも元気なおじいちゃんですね。


ニアンダ・ウォレス
盲目の不気味な雰囲気の天才という感じの人です。レプリカントの製造会社ウォレス社の社長です。性格は残忍で、作品中で一番人間らしさがありません。首のところに、操作端末とアクセスするチップを装着する部位を有しています。ちょうど攻殻機動隊みたいな感じですが、もしかすると、ウォレスは体のほとんどを義体化したレプリカントに近い存在なのかもしれません。物語の中の悪役的な存在ですが、今作中では、最後まで存命でした。もしかすると、これは続編があるのかもしれません。かなり雰囲気のあるキャラクターなので、今後、このキャラクターが活かされていくことになると期待しています。


ショートストーリー
前作のレプリカントの製造会社タイレル社はつぶれ、今作ではウォレス社が新たなレプリカントの製造会社として世界に君臨しています。しかし、タイレル社のレプリカントであるネクサスモデルはまだ存在し、レジスタンスを形成して自由を求めて抵抗運動を続けています。この辺りの話は、2019年のブレードランナーから今作までに起きた出来事を描く3つのショートストーリーの一つで描かれています。この作品はアニメ作品となっており、監督はカウボーイビバップの渡辺信一郎です。動画はYoutubeで公開されています。映画をより深く楽しむうえでも、視聴しておいた方がよいと思います。




最後に(※前作のネタバレを含む)
 今作は、上映時間3時間という長さにも関わらず、割とすんなり見ることができました。世界観、音響も前作の雰囲気を継承し、前作ファンは必見の映画だと思います。また、あくまでも、前作のエピローグという感じになっているので、前作を見ていない人は、まず前作を見る必要があります。

 全体的には面白い、よくできた映画だったと思います。しかし、やはり、前作の方が、もっと考察のしどころが多く、そちらの方が好きです。今作に関しても、情報量が多いので、見返すたびに新たな発見のある映画だと思いますが、正直、前作のように、知り合いと上映会を開いて議論するほどのモチベーションは刺激されませんでした。

 物語の冒頭で、Kが任務のためにレプリカントを処分するシーンが描かれますが、対象を処分するのに主人公の中にやや戸惑いがあるのと、また、対象を殺す際、あくまでも正当防衛的な感じだったこと、さらに、こういったシーンはアメリカ映画では割とよくあるシーンなせいか、あまり主人公がレプリカントっぽい感じがしませんでした。心を持ったAIもいますし、未来のレプリカントなので、ほぼ人間と同じ存在なのは分かりますが、あまりに人間っぽく描写されているため、心理テストでレプリカントっぽさから人間っぽさへの変化が象徴的に描かれているのに、個人的にはあまりしっくり来ませんでした。
 一方で、前作の殺人レプリカントのバティはまさにレプリカントという感じの冷酷な存在でした。ターミネーターのT1000型のようにほとんど瞬きをしないのもあり、明らかに異様な感じで、よりレプリカントっぽさが強い存在でした。さらに、仲間のレプリカントが液体窒素に手を突っ込むというクレイジーなシーンからも、「こいつら人間じゃねぇ」感がバリバリ伝わってきました。だからこそ、前作では、そんな冷酷なレプリカントであるバティが、最後にデッカードを助けるシーンがすごく象徴的なものに感じるのだと思います。今作は、このギャップに比べると、いまいちしっくりこないんですよね...。”バティは冷酷だ”と観客が認識しているからこそ、最後にデッカードがビルの鉄骨から落ちそうになり、バティが後ろから迫ってくるシーンで、誰しもが、バティがデッカードをビルから落とそうとするシーンを予測したはずです。しかし、それまでの前振りに対して、誰しもが予期しなかった展開だったからこそ、前作の内容としての良さが際立つのだと自分は思います。
「Time to die...」といって燃え尽きるバティのシーンは熱いです...ちなみに、このシーンの曲は今作のラストでも使われています。つまり、まあ、そういうことです。映画を見て確認してください。


ここまで、いろいろ書いてきましたが、この映画は良作だと思います。ぜひ、前作を見ていない人は、まず前作を見てから、劇場に足を運んでみてはいかがでしょうか?



※以下、ちょっとネタバレを含む


デッカードの正体について
前作のブレードランナーには様々なバージョンが存在します。前作のディレクターズカット版では、実はデッカードもレプリカントであるかのような描写が追加され、長い間、論議されてきました。しかし、今回、デッカードが年を取っていること、レイチェルだけが生殖機能を持った特別なモデルであったことを考えると、今作に出てくるデッカードは人間ということになると思います。なので、ブレードランナー2049はオリジナルの劇場公開版からの続編ということになります。




2017年10月13日金曜日

誕生15周年・ローゼンメイデン0-ゼロ-展に行ってきました

今回の日本一時帰国の最終目的、誕生15周年・ローゼンメイデン0-ゼロ-展に行ってきました。

ローゼンメイデン15周年を記念して、浅草、パラボリカ・ビス開催されているローゼンメイデン0展に行ってきました。
ローゼンメイデン漫画本編、ニコイチメイデンの複製原画やローゼンメイデン0に関連して大正時代風デザインのドールズたちのイラストやドールが展示されています。パラボリカ・ビスはそこまで大きな建物ではないので、そんなに大きな展示会ではないですが、ローゼンメイデンファンならぜひ訪れたいイベントです。なので、わざわざフランスからの一時帰国に乗じて行ってきました。

初、浅草です。すでに日本人形のお店などもあり、雰囲気が出ています。ちゃんとローゼンメイデン0の舞台風の場所でイベントが開催されているのはいいですね。

パラボリカ・ビス外観。まさかこんな感じの小さいの建物でイベントが開催されているとは。ひっそりとやっている感じも好きです。浅草名物、雷神門などは行かず、ここに来るとは...。

窓にも、ドールズたちが。

入口。この場所は、前に劇団イヌカレーのイベントをやった場所なんですね。イヌカレーグッズもたくさん売られていたのは知らなかったので、これはうれしい誤算でした。ただ、自分が探してたイヌカレーの冊子「ポメロメコ」は売られていませんでした...。なかなか。手に入りませんね。その代わり、ポメロメコのグッズを手に入れることができました。手に入らないと思っていたのに、ラッキーでした。さすがに、イヌカレーの生原画までは手がでませんでしたが。
いつか、ローゼンメイデンとイヌカレーのコラボも見てみたいですね。


戦利品。ちょうど自分が会場に着いたときに、アクリルポストが入荷したので、運命を感じ7体分すべて購入しました。1個1800円!しかも、結構重い!これをフランスに持って帰らねばならないとは...。
イヌカレーのポメロメコの缶バッチも手に入れられたので良かったです。
ニコイチメイデンのクリアポスターは、銀×雪華綺と全員集合版を買いました。本当は複製原画も買いたかったですが、フランスに持って帰ることを考え断念しました。ニコイチメイデンは百合百合しくていいですよね。個人的には銀×赤も見たいですね。仲の悪い百合っプルも好きです。

ローゼンメイデン展は10月31日まで開催されているので、ローゼンメイデンファンの方で、まだ行ったことがない人はぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか?女性客が8割程度ですが、ローゼンメイデンが好きな人なら、男女とはずぜひ!

2017年10月5日木曜日

メアリと魔女の花感想

遅ればせながら、日本に一時帰国したので、ついでに米林宏昌監督、スタジオポノックの作品、「メアリと魔女の花」を見てきました。公開開始からかなり時間が経ってからの視聴です。

この作品、あまり評判がよくないとは聞いていましたが、うーん、正直、自分もあまり面白くなかったと思います。なんだか、無駄に長い映画を見せられていた気が...。

前作、「借りぐらしのアリエッティ」や「思い出のマーニ―」と違い、今回の作品では宮崎駿のジブリアニメに出てくる独特の水の表現や、マスコットみたいなキャラクターがふんだんに使われていました。この辺が、何となく宮崎アニメの劣化コピー感を出している感じがします。
これに加え、天空の城ラピュタっぽいシーンやもののけ姫っぽいシーンも導入され、さらに劣化コピー感を増す形に...

魔法学校の描写も無駄に長すぎて、この辺りですでに、だるくなってしまいました。確かに、ジブリの背景クオリティはすごいですが...。やはり、もう少し、時間をかけて描写すべきシーンとそうでないシーンを区別する必要があると思います。押井守の風景描写シーンより長いです...。

少し気になったのは、最後のエンディングにはクレジットに「感謝 高畑勲、宮崎駿、鈴木敏夫」の表記が。アニメでこんな表記始めてみました。論文のAcknowledgementみたいな感じでしょうか?

正直、この作品は米林監督と相性があまりよくない感じがしました。米林監督のこれまでの作品はどれも非常に地味なものばかりで、登場人物もメインで二人くらいなのに対し、メアリと魔女の花では、宮崎アニメのような、どちらかといと正反対に位置するアニメを無理やり作ろうとして、うまくいかなかった感じがしました。米林監督は、情報量の多いファンタジー作品よりは、シンプルな現代ファンタジーアニメを作るのに向いていると個人的には思います。

メガヒットにはならないかもしれませんが、今後は米林監督の得意な分野でオリジナルの作品を開拓していってほしいです。

次回作に期待しています。